このページはC++11に採用された言語機能の変更を解説しています。
のちのC++規格でさらに変更される場合があるため関連項目を参照してください。
概要
共用体のメンバ変数として、クラスオブジェクトを保持できるようになった:
#include <iostream>
#include <complex>
#include <string>
union X {
int m1;
std::complex<double> m2; // クラスオブジェクトを
std::string m3; // 保持できる
X() : m1(0) {}
~X() {}
};
int main()
{
X x;
// int型の値を代入する
x.m1 = 3;
std::cout << x.m1 << std::endl;
// std::complex<double>型のオブジェクトを代入する
x.m2 = std::complex<double>(1.0, 2.0);
std::cout << x.m2 << std::endl;
// デストラクタを呼び出す必要がある型に対しては、
// 配置new構文でコンストラクタを使用してオブジェクト代入し、
// 明示的にデストラクタを呼び出すこと
new(&x.m3) std::string("hello");
std::cout << x.m3 << std::endl;
x.m3.~basic_string<char>();
}
出力:
3
(1,2)
hello
仕様
- 共用体の非静的メンバ変数が非トリビアルな特殊メンバ関数を持っている場合、その共用体の対応する特殊メンバ関数はデフォルトで
delete
宣言される - 共用体の非静的メンバ変数として定義されている非トリビアルなコンストラクタおよびデストラクタを持つ型のオブジェクトに対しては、配置
new
構文でオブジェクトを構築し、明示的にデストラクタを呼び出す必要がある - 共用体には、参照のメンバ変数は保持できない
- 共用体は、継承に関連する機能を使用できない
- 共用体は基底クラスを持ってはならない
- 共用体は基底クラスになってはならない
- 共用体は仮想メンバ関数を持てない
この機能が必要になった背景・経緯
共用体を使用することによって空間的なコストが節約でき、特定領域の問題を解決するツールとして機能していた。しかし共用体には、コンストラクタとデストラクタを持つ多くのオブジェクトをメンバとして保持できなかった。これらオブジェクトの保持を禁止する理由はとくにないと判断され、共用体から参照型メンバを除く全ての制限を外すこととなった。