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    decltype [N2343]

    このページはC++11に採用された言語機能の変更を解説しています。

    のちのC++規格でさらに変更される場合があるため関連項目を参照してください。

    概要

    decltype は、オペランドで指定した式の型を取得する機能である。
    型を指定する必要のある個所で decltype を使用することによって、具体的な型名を指定する代わりに式から取得した型を指定できるようになった。

    int i = 0;
    decltype(i) j = 0;                      // j は int 型
    decltype(i)* p = &i;                    // p は int* 型
    decltype((i)) k = i;                    // k は int& 型(変数名 i の周りの余分な丸カッコに注意)
    
    template<typename T, typename U>
    auto add(const T& lhs, const U& rhs)
      -> decltype(lhs + rhs);               // add の戻り値型は lhs + rhs の式の型
    
    struct S {
      using U = decltype(add('a', 'b'));    // S::U は int 型の別名
    } s;
    
    decltype(s)::U l{};                     // l は S::U 型(つまり int 型)
    

    なお、C++14 では特定の文脈において式のかわりに auto キーワードを使用する decltype(auto) が追加されている。

    仕様

    e を式とすると、decltype(e) が意味する型は以下のとおりである。

    • e が丸カッコで囲まれていない識別子の場合、あるいは、丸カッコで囲まれていないクラスメンバアクセスの場合、decltype(e)e で指定された実体の型である。
      もしそのような実体が無いか、あるいは、eオーバーロードされた複数の関数を指す場合、プログラムは不適格である。
    • そうではなくて、もし e が xvalue の場合、e の型を T とすると、decltype(e)T&& である。
    • そうではなくて、もし e が lvalue の場合、e の型を T とすると、decltype(e)T& である。
    • 上記以外の場合、decltype(e)e の型である。

    decltype のオペランドは「評価されないオペランド」である。

    ラムダ式の関数本体で、外部の自動変数に対して decltype を余分な丸カッコ付きで使用した場合、クロージャ型のメンバ変数に対する decltype とみなされる。

    sizeof とは異なり、decltype のオペランドには丸カッコが必須である。(sizeof i はOKだが、decltype i はNG)

    関数の戻り型での使用例

    #include <iostream>
    
    template<typename T, typename U>
    auto add(const T& lhs, const U& rhs)
      -> decltype(lhs + rhs)                // add の戻り値型は lhs + rhs の式の型
    {
      return lhs + rhs;
    }
    
    int main()
    {
      auto r = add(1, 2.0F);                // r の型は float 型
      std::cout << std::fixed << r << '\n';
    }
    

    出力

    3.000000
    

    変数の型としての使用例

    #include <iostream>
    
    int main()
    {
      int i = 10;
      decltype(i) j = i;                    // j は int 型
      decltype((i)) k = i;                  // k は int& 型(i は lvalue で丸カッコが付いているので)
    
      i = 42;
      std::cout << j << ", " << k << '\n';
    }
    

    出力

    10, 42
    

    ネストした名前の指定子としての使用例

    #include <iostream>
    
    struct S {
      int i = 42;
    };
    
    int main()
    {
      S s;
      auto mp = &decltype(s)::i;             // mp の型は int S::* 型(S の int 型のメンバへのポインタ)
      std::cout << s.*mp << '\n';
    }
    

    出力

    42
    

    new 式の型、キャスト、および、明示的デストラクタ呼び出しの一部としての使用例

    #include <iostream>
    
    struct S {
      S() { std::cout << "S()\n"; }
      ~S() { std::cout << "~S()\n"; }
    };
    
    S f();
    
    int main()
    {
      std::cout << "allocate\n";
      void* p = ::operator new(sizeof(f()));
    
      std::cout << "construct\n";
      ::new(p) decltype(f());                       // 配置 new で p の指すメモリに S 型のオブジェクトを構築
    
      std::cout << "destruct\n";
      auto sp = static_cast<decltype(f())*>(p);     // デストラクタ呼び出しのため、S 型へのポインタにキャスト
      sp->~decltype(f())();                         // 明示的デストラクタ呼び出しで sp の指すメモリの S 型オブジェクトを破棄
    
      std::cout << "deallocate\n";
      ::operator delete(p);
    }
    

    出力

    allocate
    construct
    S()
    destruct
    ~S()
    deallocate
    

    変換演算子の型としての使用例

    #include <iostream>
    
    struct S {
      int i;
      S(int i) : i(i) {}
      operator decltype(i)() { return i; }        // int 型への変換演算子
    };
    
    int main()
    {
      S s(42);
      std::cout << s << '\n';
    }
    

    出力

    42
    

    template 型引数としての使用例(下記の例は C++14 以降でのみコンパイル可能)

    #include <iostream>
    #include <utility>
    
    template<typename T>
    auto d(T&& x)
    {
      return x + x;
    }
    
    struct S {
      static constexpr int g = 20;
    };
    
    constexpr int S::g;
    
    int main()
    {
      auto l = [](auto&& x) {
        std::cout << "start\n";
        auto ret = d(std::forward<decltype(x)>(x));     // x の型のままで転送
        std::cout << "end\n";
        return ret;
      };
      std::cout << l(S::g) << '\n';
    }
    

    出力

    start
    end
    40
    

    この機能が必要になった背景・経緯

    以下のような関数テンプレートの戻り値型を考える:

    template <class Func, class T>
    ??? trace(Func f, T t) { std::cout << "Calling f"; return f(t); }
    

    C++03 まででは、このような関数テンプレートの戻り値型をあらゆるケースで正確に表現することは不可能だった。

    C++11 では、本機能と戻り値の型を後置する関数宣言構文を使用することによって、以下のように書くことができるようになった。

    template <class Func, class T>
    auto trace(Func f, T t) -> decltype(f(t)) { std::cout << "Calling f"; return f(t); }
    

    検討されたほかの選択肢

    GCC や Clang には decltype が導入される前から、同様の機能を持つ typeof が非標準の拡張機能として存在している。
    decltype もこれらの拡張機能を参考にしているが、大きく以下の 3 点において typeof とは異なる。

    • 参照の扱い。
      decltype はオペランドの型にある参照を保存するが、typeof はオペランドの型から参照を外す。
      ただし、上記の仕様に書かれているように decltype もオペランドが単なる識別子やクラスメンバアクセスだった場合には、当該識別子やメンバがたとえ lvalue であっても左辺値参照とはならない。
      本機能の decltype という名称はここから来ている。(declared type:宣言された型)
    • 使用可能な箇所。
      decltype は型名が使用可能な箇所であれはほぼどこでも使用可能であるが、typeof は変数宣言でしか使用できない。
    • オペランドの種類。
      decltype のオペランドは式のみしか許されていないが、typeof は式だけでなく型そのものも許されている。

    関連項目

    参照