pair<iterator, bool> insert(const value_type& v);
pair<iterator, bool> insert(value_type&& rv); // (1)
iterator insert(const_iterator position, const value_type& v);
iterator insert(const_iterator position, value_type&& rv); // (2)
template <class InputIterator>
void insert(InputIterator first, InputIterator last); // (3)
void insert(initializer_list<value_type> il); // (4)
insert_return_type insert(node_type&& nh); // (5) C++17
iterator insert(const_iterator hint, node_type&& nh); // (6) C++17
概要
コンテナに要素を追加する。
要件
-
v
を引数にとる形式((1)、(2)の上側)では、value_type
はコンテナに対してコピー挿入可能(CopyInsertable)でなければならない。
コンテナに対してコピー挿入可能とは、m
をアロケータ型allocator_type
の左辺値、p
を要素型value_type
へのポインタとすると、以下の式が適格(well-formed)であるということである。std::allocator_traits<allocator_type>::construct(m, p, v);
-
rv
を引数にとる形式((1)、(2)の下側)では、value_type
はコンテナに対してムーブ挿入可能(MoveInsertable)でなければならない。
コンテナに対してムーブ挿入可能とは、m
をアロケータ型allocator_type
の左辺値、p
を要素型value_type
へのポインタとすると、以下の式が適格(well-formed)であるということである。std::allocator_traits<allocator_type>::construct(m, p, std::move(rv));
-
引数
position
は、コンテナの有効な読み取り専用イテレータでなければならない。
なお、標準では間接参照可能(dereferenceable)である必要があることになっているが、その必要はない(つまり、最終要素の次を指すイテレータでも良い)ものと思われる。 -
引数
first
、および、last
は、入力イテレータの要件を満たし、かつ、イテレータ範囲[first, last)
が当該コンテナ以外を指す有効な範囲でなければならない。
また、引数first
、および、last
を引数にとる形式((3))では、このコンテナの要素型value_type
は、コンテナに対して*first
から直接構築可能(EmplaceConstructible)でなければならない。
ここで、コンテナに対して*first
から直接構築可能とは、m
をアロケータ型allocator_type
の左辺値、p
を要素型value_type
へのポインタとすると、以下の式が適格(well-formed)であるということである。std::allocator_traits<allocator_type>::construct(m, p, *first);
なお、
first
、および、last
は、標準ではvalue_type
を参照しなければならない(つまり、コンテナのvalue_type
とstd::iterator_traits<decltype(first)>::value_type
が同一の型でなければならない)ことになっているが、実際にはその必要はなく、上記の直接構築可能の要件を満たすだけで良いものと思われる。 -
(4)の形式では、
value_type
はコンテナに対してコピー挿入可能でなければならない。 -
(5), (6)の形式では、
nh
は空である、または、(*this).get_allocator() == nh.get_allocator()
でなければならない。
効果
- (1) : 引数
v
、あるいはrv
で指定した値と等価なキーがコンテナに存在していなければ、当該要素を追加する。 - (2) : 引数
v
、あるいはrv
で指定した値と等価なキーがコンテナに存在していなければ、当該要素を追加する。
引数position
は、要素の挿入位置を探し始める場所のヒントとして使用されるが、実装によって無視されるかもしれない。 - (3) : イテレータ範囲
[first, last)
のすべての要素t
に対して、(1)の形式のinsert(t)
を呼び出した場合と等価である。 - (4) : (3)の形式を
insert(il.begin(), il.end())
として呼び出した場合と等価である。 - (5) :
nh
が空の場合、効果はない。 それ以外の場合、nh.key()
と等価のキーを持つ要素がコンテナにない場合に限り、nh
が所有する要素を挿入する。 - (6) :
nh
が空の場合、効果はなく、(*this).end()
を返す。 それ以外の場合、nh.key()
と等価のキーを持つ要素がコンテナにない場合に限り、nh
が所有する要素を挿入する。nh.key()
と等価のキーの要素を指すイテレータを常に返す。 要素は、hint
の直前の位置のできるだけ近くに挿入される。
戻り値
- (1) :
pair
のbool
部分(second
部)は、要素が追加されたらtrue
、追加されなかったら(既にあったら)false
。
pair
のiterator
部分(first
部)は、追加された要素(bool
部分がtrue
の場合)、あるいは、既にあった要素(bool
部分がfalse
の場合)を指すイテレータ。 - (2) : 新たな要素が追加された場合、その追加された要素を指すイテレータ。
新たな要素が追加されなかった場合、既にあった要素を指すイテレータ。 - (3) : なし
- (4) : なし
- (5) : 戻り値としては、
insert_return_type
を返す。insert_return_type
のイテレータ型メンバ変数position
、bool
型メンバ変数inserted
に格納される値は(1), (2)のものと同じ情報である。nh
が空の場合は、position
は終端イテレータである。node_type
型メンバ変数node
には、- 挿入された場合には、空のノードハンドル。
- 挿入されなかった場合には、
nh
の値である。
- (6) :
nh
が空の場合、(*this).end()
を返す。そうではない場合、nh
と等価のキーの要素を指すイテレータを常に返す。
例外
単一要素の形式((1)と(2))では、ハッシュ関数以外から例外が投げられた場合には、挿入はされない。
計算量
- (1) : 平均的なケースでは定数(O(1))だが、最悪のケースではコンテナの要素数
size()
に比例(O(N))。 - (2) : 平均的なケースでは定数(O(1))だが、最悪のケースではコンテナの要素数
size()
に比例(O(N))。 - (3) : 平均的なケースでは引数の範囲の要素数
std::distance(first, last)
に比例(O(N))するが、最悪のケースでは引数の範囲の要素数std::distance(first, last)
とコンテナの要素数size()
に 1 加えたものの積に比例(O(std::distance(first, last) * (size() + 1)
))。 -
(4) : (3)の形式を
insert(il.begin(), il.end())
として呼び出した場合と等価。 -
(5), (6) : 平均的なケースでは
O(1)
、最悪のケースではO(size())
。
備考
- これらの関数が呼ばれた後も、当該コンテナ内の要素を指す参照は無効にはならない。 なお、規格書に明確な記載は無いが、当該コンテナ内の要素を指すポインタも無効にはならない。
-
これらの関数が呼ばれた後も、呼び出しの前後でこのコンテナのバケット数(
bucket_count()
の戻り値)が変わらなかった場合には当該コンテナを指すイテレータは無効にはならない。
それ以外の場合は、当該コンテナを指すイテレータは無効になる可能性がある。
コンテナのバケット数が変わらない場合とは、- 追加しようとした要素と等価なキーの要素が全て既にコンテナに存在したため、要素が追加されなかった。
- 要素追加後の要素数が、要素追加前のバケット数(
bucket_count()
の戻り値)×最大負荷率(max_load_factor()
の戻り値)よりも小さかった。
のいずれかである。
なお、後者の条件は「よりも小さい」となっているが、最大負荷率の定義からすると「以下」の方が適切と思われる。reserve
も参照。 -
(5), (6) の場合、要素はコピーもムーブもされない。
例
#include <iostream>
#include <unordered_set>
#include <forward_list>
#include <iterator>
#include <algorithm>
#include <string>
template <class C>
void print(const std::string& label, const C& c)
{
std::cout << label << " : ";
std::copy(c.begin(), c.end(), std::ostream_iterator<typename C::value_type>(std::cout, " "));
std::cout << std::endl;
}
int main()
{
std::cout << std::boolalpha;
// 一つの要素を挿入((1)の形式)
{
std::unordered_set<int> us{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, };
auto p1 = us.insert(6); // 追加されるケース
std::cout << p1.second << ' ' << *p1.first << ' ';
auto p2 = us.insert(2); // 追加されないケース
std::cout << p2.second << ' ' << *p2.first << std::endl;
print("insert one element", us);
}
// 一つの要素を挿入((2)の形式)
{
std::unordered_set<int> us{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, };
auto it1 = us.insert(us.begin(), 6); // 追加されるケース
std::cout << *it1 << ' ';
auto it2 = us.insert(us.begin(), 2); // 追加されないケース
std::cout << *it2 << std::endl;
print("insert one element with hint", us);
}
// 複数の要素を挿入((3)の形式)
{
std::unordered_set<int> us{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, };
std::forward_list<int> fl{ 5, 6, 0, 8, 7, };
us.insert(fl.cbegin(), fl.cend()); // forward_list の要素を全部
print("insert range", us);
}
// 複数の要素を挿入((4)の形式)
{
std::unordered_set<int> us{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, };
us.insert({ 5, 6, 0, 8, 7, });
print("insert initializer_list", us);
}
}
出力
true 6 false 2
insert one element : 6 5 4 3 2 1 0
6 2
insert one element with hint : 6 5 4 3 2 1 0
insert range : 7 8 6 5 4 3 2 1 0
insert initializer_list : 7 8 6 5 4 3 2 1 0
注:unordered_set
は非順序連想コンテナであるため、出力順序は無意味であることに注意
バージョン
言語
- C++11
処理系
- Clang: 3.1 ✅
- GCC: 4.7.0 ✅
- ICC: ?
- Visual C++: ?
実装例
(2)以降の形式は、(1)の形式を使って実装することができる。
template <class Key, class Hash, class Pred, class Allocator>
inline iterator unordered_set<Key, Hash, Pred, Allocator>::insert(const_iterator, const value_type& v)
{
return insert(v).first;
}
template <class Key, class Hash, class Pred, class Allocator>
inline iterator unordered_set<Key, Hash, Pred, Allocator>::insert(const_iterator, value_type&& rv)
{
return insert(std::move(rv)).first;
}
template <class Key, class Hash, class Pred, class Allocator>
template <class InputIterator>
inline void unordered_set<Key, Hash, Pred, Allocator>::insert(InputIterator first, InputIterator last);
{
for (; first != last; ++first)
insert(*first);
}
template <class Key, class Hash, class Pred, class Allocator>
inline void unordered_set<Key, Hash, Pred, Allocator>::insert(initializer_list<Key> il);
{
insert(il.begin(), il.end());
}
関連項目
名前 | 説明 |
---|---|
emplace |
コンテナ内への要素の直接構築 |
emplace_hint |
挿入位置のヒントを使用したコンテナ内への要素の直接構築 |
erase |
要素の削除 |
clear |
全要素の削除 |
swap |
内容の交換 |
bucket_count |
バケット数の取得 |
load_factor |
現在の負荷率(バケットあたりの要素数の平均)を取得 |
max_load_factor |
負荷率の最大値を取得、設定 |
rehash |
最小バケット数指定によるバケット数の調整 |
reserve |
最小要素数指定によるバケット数の調整 |