namespace std {
template <class T>
T
arg(const complex<T>& x); // (1) C++03
template <class T>
constexpr T
arg(const complex<T>& x); // (1) C++26
complex<Promoted>
arg(Arithmetic x); // (2) C++11
constexpr complex<Promoted>
arg(Arithmetic x); // (2) C++26
}
概要
複素数値の偏角を得る。arg は argument(偏角)の略。
- (1) :
complex<T>
に対するオーバーロード - (2) : 算術型に対する追加のオーバーロード
(2)は、以下のように振る舞う:
- 実引数の型が浮動小数点数型
T
の場合、complex<T>
にキャストされているかのように振る舞う - そうでなくて、実引数が整数型の場合、
complex<double>
にキャストされているかのように振る舞う (C++23)
また、これらの追加のオーバーロードが関数テンプレートなのか否か、あるいは、引数が参照型なのか否かなどについては、規格では何も言及されていない。
戻り値
引数 x
の偏角。単位はラジアン。atan2(imag(x), real(x))
。
備考
- 規格には、上記の戻り値に記載されている以上の規定・説明は無い。
なお、C99 の規格にある本関数と等価の関数群(complex.h
ヘッダのcarg
、cargf
、cargl
の 3 つ。それぞれ C++ のarg<double>
、arg<float>
、arg<long double>
に相当)では、本関数は実軸の負の領域すべてを分岐截断とすること、および、戻り値は[-π, π]
の区間であることが記載されている。 atan2
は、処理系が ISO IEC 60559(IEEE 754 と同一)に準拠していない場合、両方の引数が0
の場合には定義域エラー(domain error)としても良いとされているので注意(つまり、0
の偏角を求めようとするとエラーとなる)。
ISO IEC 60559 に準拠している場合、両方の引数が0
の場合には戻り値が0
であることが規定されている。- 処理系が ISO IEC 60559 に準拠しているかどうかは、C99 の場合はマクロ
__STDC_IEC_559_COMPLEX__
が1
に定義されている事で判別可能であるが、C++ の規格書には該当する記載を見つける事ができなかった。
例
#include <iostream>
#include <complex>
int main()
{
std::complex<double> c(1.0, 2.0);
std::complex<double> result = std::arg(c);
std::cout << "arg( " << c << " ) = " << result << std::endl;
}
出力
arg( (1,2) ) = 1.10715
バージョン
言語
- C++98(追加のオーバーロードは C++11 から)
処理系
- Clang: 3.0 ✅, 3.1 ✅, 3.2 ✅, 3.3 ✅, 3.4(追加のオーバーロード含む) ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0(追加のオーバーロード以外) ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0(追加のオーバーロード含む) ✅
- ICC: ??
- Visual C++: ??
関連項目
名前 | 説明 |
---|---|
real |
複素数の実部を得る。 |
imag |
複素数の虚部を得る。 |
abs |
複素数の絶対値を得る。 |
norm |
複素数体のノルムを得る。 |
conj |
共役複素数を得る。 |
proj |
リーマン球面への射影を得る。 |
polar |
指定した絶対値と偏角の複素数値を得る。 |
参照
- P1467R9 Extended floating-point types and standard names
- C++23で拡張浮動小数点数型への対応が行われ、整数型も考慮されるようになった
- P1383R2 More constexpr for
<cmath>
and<complex>
- C++26で
constexpr
対応した
- C++26で