namespace std {
template <class T>
class allocator;
template <>
class allocator<void> { // C++17から非推奨・C++20で削除
using pointer = void*;
using const_pointer = const void*;
using value_type = void;
template <class U> struct rebind { using other = allocator<U>; };
};
}
概要
allocator
は、標準ライブラリ内でデフォルト使用されるメモリアロケータクラスである。
標準ライブラリ内では、主にコンテナがメモリの確保と解放を行っているが、コンテナ内で使用するメモリアロケータは、ユーザーが独自に実装したものをallocator
クラスの代わりに使用することもできる。例:
std::vector<int> v1; // std::allocatorクラスでメモリアロケートされる。
std::vector<int, MyAllocator<int>> v2; // 自分が用意したアロケータを使用する。
備考
C++11から:
デストラクタを除く、allocator
クラスのメンバ関数は、データ競合を引き起こさない。そのため、複数スレッドから同時にallocator
クラスのメンバ関数が呼ばれたとしても、正しくメモリ確保・解放される。
メンバ関数
名前 | 説明 | 対応バージョン |
---|---|---|
(constructor) |
コンストラクタ | |
(destructor) |
デストラクタ | |
operator= |
代入演算子 | |
allocate |
メモリを確保する | |
allocate_at_least |
指定した要素数以上のメモリを確保する | C++23 |
deallocate |
メモリを解放する | |
address |
変数のアドレスを取得する | C++17から非推奨 C++20で削除 |
max_size |
一度に確保可能なメモリの最大サイズを取得する | C++17から非推奨 C++20で削除 |
construct |
引数を元にインスタンスを構築する | C++17から非推奨 C++20で削除 |
destroy |
インスタンスを破棄する | C++17から非推奨 C++20で削除 |
メンバ型
名前 | 説明 | 対応バージョン |
---|---|---|
value_type |
要素の型 T |
|
propagate_on_container_move_assignment |
コンテナのムーブ代入時に、アロケータの状態を伝播するか。 true_type |
C++14 |
size_type |
要素数を表す符号なし整数型 size_t |
|
difference_type |
ポインタの差を表す符号付き整数型 ptrdiff_t |
|
pointer |
要素のポインタ型 T* |
C++17から非推奨 C++20で削除 |
const_pointer |
読み取り専用の要素のポインタ型 const T* |
C++17から非推奨 C++20で削除 |
reference |
要素の参照型 T& |
C++17から非推奨 C++20で削除 |
const_reference |
読み取り専用の要素の参照型 const T& |
C++17から非推奨 C++20で削除 |
rebind<U> |
型U を確保するように再束縛する |
C++17から非推奨 C++20で削除 |
is_always_equal |
同じ型のアロケータオブジェクトが2つある場合、それらが常に同値であるか。true_type |
C++17 |
非メンバ関数
名前 | 説明 | 対応バージョン |
---|---|---|
operator== |
等値比較。常にtrue を返す |
|
operator!= |
非等値比較。常にfalse を返す |
非推奨・削除の詳細
-
address
/max_size
/construct
/destroy
/pointer
/const_pointer
/reference
/const_reference
/rebind<U>
メンバがC++17から非推奨となり、C++20で削除された。- これらは特殊なアロケータの実装でない限り共通に定義できるものであるため、アロケータの中間インタフェースである
std::allocator_traits
クラスに、共通のデフォルト実装を定義することとなった。 - 以後は
std::allocator_traits<std::allocator<T>>
クラスの各機能を代替として使用すること。
- これらは特殊なアロケータの実装でない限り共通に定義できるものであるため、アロケータの中間インタフェースである
-
C++17から
void
の特殊化版が非推奨となり、C++20で削除された。- 従来
void
の特殊化版はallocate
/deallocate
メンバ関数が存在せず、実際に確保するオブジェクトの型(R
とする)を隠蔽しつつメモリアロケータとしてはstd::allocator
を使うことを表明するためにのみ用いられた。 この際typename std::allocator<void>::template rebind<R>::other
型から実際に確保するオブジェクト型のstd::allocator<R>
を再束縛していた。 - この非推奨・削除は
std::allocator<void>
もプライマリテンプレートからインスタンス化されるようになったことを意味し、C++20以降もstd::allocator<void>
の使用自体は問題なく可能であることに注意。- なお、プライマリテンプレートからインスタンス化されるようになっても
allocate
/deallocate
メンバは内部でsizeof(void)
を要求するため引き続き使用不可能であり、std::allocator<void>
の使用用途としては従来と同じく再束縛を目的とすることになる(上述のようにstd::allocator_traits
の代替機能を用いてtypename std::allocator_traits<std::allocator<void>>::template rebind_alloc<R>
のようにする)。
- なお、プライマリテンプレートからインスタンス化されるようになっても
- 従来
-
メンバ型の
size_type
とdifference_type
は、C++17で非推奨となったがC++20で非推奨が取り消された。
例
#include <memory>
#include <iostream>
#include <algorithm>
#include <numeric>
int main(int argc, char** argv) {
auto alc = std::allocator<int>();
// 10要素のint型が入る領域を確保
int* arr = alc.allocate(10);
// 確保した領域の各要素を構築する(コンストラクタを呼び出す)
for (std::size_t i = 0; i != 10; ++i) alc.construct(arr + i);
std::iota(arr, arr + 10, 0);
std::for_each(arr, arr + 10, [](int i) { std::cout << i << " "; });
std::cout << std::endl;
// 配列の各要素を破棄する(デストラクタを呼び出す)
for (std::size_t i = 0; i != 10; ++i) alc.destroy(arr + i);
// 領域を解放する
alc.deallocate(arr, 10);
}
出力
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
処理系
propagate_on_container_move_assignment
- Clang: 3.4
- GCC:
- Visual C++: 2012, 2013
参照
- A visitor’s guide to C++ allocators
- LWG #2103 -
std::allocator_traits<std::allocator<T>>::propagate_on_container_move_assignment
- N2669 Thread-Safety in the Standard Library (Rev 2)
- AllocatorAwareContainer: Introduction and pitfalls of
propagate_on_container_XXX
defaults - P0174R2 Deprecating Vestigial Library Parts in C++17
- P0619R4 Reviewing deprecated facilities of C++17 for C++20
- N4258 Cleaning-up noexcept in the Library, Rev 3