namespace std {
template <class T>
complex<T>
pow(const complex<T>& x,
const complex<T>& y); // (1) C++03
template <class T>
constexpr complex<T>
pow(const complex<T>& x,
const complex<T>& y); // (1) C++26
template <class T>
complex<T>
pow(const complex<T>& x,
const T& y); // (2) C++03
template <class T>
constexpr complex<T>
pow(const complex<T>& x,
const T& y); // (2) C++26
template <class T>
complex<T>
pow(const T& x,
const complex<T>& y); // (3) C++03
template <class T>
constexpr complex<T>
pow(const T& x,
const complex<T>& y); // (3) C++26
template <class T>
complex<T>
pow(const complex<T>& x,
int y); // (4) C++03 まで
complex<Promoted>
pow(ArithmeticOrComplex1 x,
ArithmeticOrComplex2 y); // (5) C++11
constexpr complex<Promoted>
pow(ArithmeticOrComplex1 x,
ArithmeticOrComplex2 y); // (5) C++26
}
概要
複素数値の累乗を得る。pow は power(累乗、指数)の略。
- (1) :
complex<T>
同士に対するオーバーロード - (2) :
complex<T>
とT
の組み合わせでのオーバーロード - (3) :
T
とcomplex<T>
の組み合わせでのオーバーロード - (3) :
complex<T>
とint
の組み合わせでのオーバーロード - (5) :
complex<T>
と任意の算術型、およびその逆の組み合わせに対する追加のオーバーロード- C++11 : 少なくとも 1 つの実引数が
complex<T>
の場合にオーバーロード解決の際に考慮され、以下のように規定されている- いずれかの実引数の型が
complex<long double>
かlong double
の場合、両方の引数がcomplex<long double>
にキャストされているかのように振る舞う - そうでなくて、いずれかの実引数の型が
complex<double>
かdouble
か整数型の場合、両方の引数がcomplex<double>
にキャストされているかのように振る舞う - そうでなくて、いずれかの実引数の型が
complex<float>
かfloat
の場合、両方の引数がcomplex<float>
にキャストされているかのように振る舞う - また、これらの追加のオーバーロードが関数テンプレートなのか否か、あるいは、引数が参照型なのか否かなどについては、規格では何も言及されていない
- いずれかの実引数の型が
- C++23 :
complex<T1>
と、T2
もしくはcomplex<T2>
の組み合わせ、およびその逆の組み合わせに対するオーバーロードとなり、戻り値はその共通の型complex<common_type_t<T1, T2>>
となった
- C++11 : 少なくとも 1 つの実引数が
戻り値
引数 x
の y
乗。exp(y * log(x))
で定義される。pow(0, 0)
の戻り値は処理系定義である。
備考
- 引数
x
に対する分岐截断は負の実軸に沿っている。 - C99 の規格にある本関数と等価の関数群(
complex.h
ヘッダのcpow
、cpowf
、cpowl
の 3 つ。それぞれ C++ のpow<double>
、pow<float>
、pow<long double>
に相当)では、本関数がexp(y * log(x))
で定義されるとの記載は無く、処理系が ISO IEC 60559 に準拠している場合でもそのように計算することが可能である旨のみの記載となっている。
また、処理系が ISO IEC 60559 に準拠している場合、結果のパートを計算する際に適切な浮動小数点例外を引き起こすこと、および、偽の浮動小数点例外を引き起こしても良いことが記載されている。 - 処理系が ISO IEC 60559 に準拠しているかどうかは、C99 の場合はマクロ
__STDC_IEC_559_COMPLEX__
が1
に定義されている事で判別可能であるが、C++ の規格書には該当する記載を見つける事ができなかった。 -
累乗の算出については、一部の算術型、および、
valarray
クラステンプレートに対しても、他のヘッダで定義されている。引数の型 関数 ヘッダ 備考 float
pow
cmath
double
pow
cmath
long double
pow
cmath
任意の算術型 pow
cmath
C++11 から valarray<T>
pow
valarray
例
#include <iostream>
#include <complex>
int main()
{
std::complex<double> c(1.0, 2.0);
std::complex<double> d(3.0, 4.0);
std::complex<double> result = std::pow(c, d);
std::cout << "pow( " << c << ", " << d << " ) = " << result << std::endl;
}
12
#include <iostream>
#include <complex>
int main()
{
std::complex<double> c(1.0, 2.0);
std::complex<double> d(3.0, 4.0);
std::complex<double> result = std::pow(c, d);
std::cout << "pow( " << c << ", " << d << " ) = " << result << std::endl;
}
出力
pow( (1,2), (3,4) ) = (0.12901,0.0339241)
バージョン
言語
- C++98
処理系
- Clang: 3.0 ✅, 3.1 ✅, 3.2 ✅, 3.3 ✅, 3.4(追加のオーバーロード含む) ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0(追加のオーバーロード以外) ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0(追加のオーバーロード含む) ✅
- ICC: ??
- Visual C++: ??
備考
- libstdc++ では、バージョンによって C++11 モードの挙動が異なる。
- 4.3.6 では第 2 引数が
int
のオーバーロード (4) が無効化されていない。また、追加のオーバーロード (5) はcomplex<T>
でない方の引数の型が算術型でなくても、算術型への暗黙の型変換が可能であれば、適用されてしまう。さらに、追加のオーバーロード (5) の結果型は、引数の型がcomplex<float>
と整数型の場合、complex<float>
になってしまう。 - 4.4.7、4.5.4 では、第 2 引数が
int
のオーバーロード (4) は無効化されているが、追加のオーバーロード (5) はcomplex<T>
でない方の引数の型が算術型でなくても、算術型への暗黙の型変換が可能であれば、適用されてしまう。さらに、追加のオーバーロード (5) の結果型は、引数の型がcomplex<float>
と整数型の場合、complex<float>
になってしまう。 - 4.6.4 から 4.8.2 の間は第 2 引数が
int
のオーバーロード (4) は無効化されている。また、追加のオーバーロード (5) は、引数の型がcomplex<T>
と算術型でなければ適用されない。(最も規格に準拠した挙動である) - 4.9.0 では第 2 引数が
int
のオーバーロード (5) は無効化されていないが、追加のオーバーロード (5) は、引数の型がcomplex<T>
と算術型でなければ適用されない。 なお、いずれのバージョンでも C++03 モードでは追加のオーバーロード (5) は無効化されている。
- 4.3.6 では第 2 引数が
- libc++ では、C++03 モードでも第 2 引数が
int
のオーバーロード (4) は使用できず、また、追加のオーバーロード (5) が使用できる。
関連項目
名前 | 説明 |
---|---|
acos |
複素数の逆余弦を求める。 |
asin |
複素数の逆正弦を求める。 |
atan |
複素数の逆正接を求める。 |
acosh |
複素数の双曲線逆余弦を求める。 |
asinh |
複素数の双曲線逆正弦を求める。 |
atanh |
複素数の双曲線逆正接を求める。 |
cos |
複素数の余弦を求める。 |
cosh |
複素数の双曲線余弦を求める。 |
exp |
自然対数の底 e の累乗(複素数)を求める。 |
log |
複素数の自然対数を求める。 |
log10 |
複素数の常用対数を求める。 |
sin |
複素数の正弦を求める。 |
sinh |
複素数の双曲線正弦を求める。 |
sqrt |
複素数の平方根を求める。 |
tan |
複素数の正接を求める。 |
tanh |
複素数の双曲線正接を求める。 |
pow |
実数の累乗を求める。 |
参照
- P1467R9 Extended floating-point types and standard names
- C++23で拡張浮動小数点数型への対応が行われた
- P1383R2 More constexpr for
<cmath>
and<complex>
- C++26で
constexpr
対応した
- C++26で