namespace std {
template <class T>
complex<T>
log(const complex<T>& x); // (1) C++03
template <class T>
constexpr complex<T>
log(const complex<T>& x); // (1) C++26
}
概要
複素数の自然対数(ネイピア数 e を底とした対数)を得る。log は logarithm(対数)、あるいは、logarithmic function(対数関数)の略。
戻り値
引数 x
の自然対数(ネイピア数 e を底とした対数)。本関数の値域は、実軸は全域で、虚軸は [ -
iπ,
iπ ]
の範囲である。
x
が負の実数の場合、imag(log(x))
は π
である(ただし、備考参照)。
備考
- 分岐截断は負の実軸に沿っている。
- 規格には、上記の戻り値の記載、および、分岐截断以外の規定・説明は無い。
なお、C99 の規格にある本関数と等価の関数群(complex.h
ヘッダのclog
、clogf
、clogl
の 3 つ。それぞれ C++ のlog<double>
、log<float>
、log<long double>
に相当)では、処理系が ISO IEC 60559(IEEE 754 と同一)に準拠している場合、以下のように規定されている。log(conj(x)) = conj(log(x))
。log(complex(-0, +0))
はcomplex(-∞, +π)
を返し、ゼロ除算の浮動小数点例外(FE_DIVBYZERO
)を引き起こす。log(complex(+0, +0))
はcomplex(-∞, +0)
を返し、ゼロ除算の浮動小数点例外(FE_DIVBYZERO
)を引き起こす。- 有限の
x
に対して、log(complex(x, +∞))
はcomplex(+∞, +π/2)
を返す。 - 有限の
x
に対して、log(complex(x, NaN))
はcomplex(NaN, NaN)
を返し、無効演算の浮動小数点例外(FE_INVALID
)を引き起こす可能性がある。 - 有限で正の符号を持つ(
+0
を含む)y
に対して、log(complex(-∞, y))
はcomplex(+0, +π)
を返す。 - 有限で正の符号を持つ(
+0
を含む)y
に対して、log(complex(+∞, y))
はcomplex(+∞, +0)
を返す。 log(complex(-∞, +∞))
はcomplex(+∞, +3π/4)
を返す。log(complex(+∞, +∞))
はcomplex(+∞, +π/4)
を返す。log(complex(±∞, NaN))
はcomplex(+∞, NaN)
を返す。- 有限の
y
に対して、log(complex(NaN, y))
はcomplex(NaN, NaN)
を返し、無効演算の浮動小数点例外(FE_INVALID
)を引き起こす可能性がある。 log(complex(NaN, +∞))
はcomplex(+∞, NaN)
を返す。log(complex(NaN, NaN))
はcomplex(NaN, NaN)
を返す。
- 処理系が ISO IEC 60559 に準拠しているかどうかは、C99 の場合はマクロ
__STDC_IEC_559_COMPLEX__
が1
に定義されている事で判別可能であるが、C++ の規格書には該当する記載を見つける事ができなかった。 - 規格には、上記の「戻り値」に記載の通り、
x
が負の実数の場合には戻り値の虚部はπ
との記載があるが、値域の虚部が-π
を含むことからも分かるように、x
の実部が負で虚部が-0
の場合(この場合もx
は負の実数と考えられる)には戻り値の虚部は-π
である。なお、C99 の規格にはそのような記載はない。 - 本関数は数学的には
complex(log(abs(x)), arg(x))
と等価である。 -
自然対数の算出については、一部の算術型、および、
valarray
クラステンプレートに対しても、他のヘッダで定義されている。引数の型 関数 ヘッダ 備考 float
log
cmath
double
log
cmath
long double
log
cmath
任意の整数型 log
cmath
C++11 から valarray<T>
log
valarray
例
#include <iostream>
#include <complex>
int main()
{
std::complex<double> c(1.0, 2.0);
std::complex<double> result = std::log(c);
std::cout << "log( " << c << " ) = " << result << std::endl;
}
出力
log( (1,2) ) = (0.804719,1.10715)
バージョン
言語
- C++98
処理系
- Clang: 3.0 ✅, 3.1 ✅, 3.2 ✅, 3.3 ✅, 3.4 ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0 ✅
- ICC: ??
- Visual C++: ??
備考
- libstdc++ では、通常 glibc の対応する関数を呼び出すため、上記の備考に記載した C99 の ISO IEC 60559 準拠要件を満たす。
しかし、glibc を使用していない libstdc++、および、libc++ は、当該要件を満たしていない(満たすつもりが無い?)ようである。
関連項目
名前 | 説明 |
---|---|
acos |
複素数の逆余弦を求める。 |
asin |
複素数の逆正弦を求める。 |
atan |
複素数の逆正接を求める。 |
acosh |
複素数の双曲線逆余弦を求める。 |
asinh |
複素数の双曲線逆正弦を求める。 |
atanh |
複素数の双曲線逆正接を求める。 |
cos |
複素数の余弦を求める。 |
cosh |
複素数の双曲線余弦を求める。 |
exp |
自然対数の底 e の累乗(複素数)を求める。 |
log10 |
複素数の常用対数を求める。 |
pow |
複素数の累乗を求める。 |
sin |
複素数の正弦を求める。 |
sinh |
複素数の双曲線正弦を求める。 |
sqrt |
複素数の平方根を求める。 |
tan |
複素数の正接を求める。 |
tanh |
複素数の双曲線正接を求める。 |
log |
実数の自然対数を求める。 |
参照
- P1383R2 More constexpr for
<cmath>
and<complex>
- C++26で
constexpr
対応した
- C++26で