namespace std {
template <class T>
complex<T>
sqrt(const complex<T>& x); // (1) C++03
template <class T>
constexpr complex<T>
sqrt(const complex<T>& x); // (1) C++26
}
概要
複素数値の平方根(square root)を得る。
戻り値
引数 x
の平方根のうち、(複素平面の)右半平面の範囲の複素数値(つまり、実部は 0 以上)。もし、引数が負の実数の場合、戻り値は虚軸の正の範囲。
つまり、複素数の平方根にも実数と同様に±の2つがあるがこの関数は常に正の平方根を返す。また、負の実数の平方根は常に純虚数($\sqrt{-x}i$)となる。
備考
- 分岐截断は負の実軸に沿っている。
- 規格には、上記の戻り値の記載、および、分岐截断以外の規定・説明は無い。
なお、C99 の規格にある本関数と等価の関数群(complex.h
ヘッダのcsqrt
、csqrtf
、csqrtl
の 3 つ。それぞれ C++ のsqrt<double>
、sqrt<float>
、sqrt<long double>
に相当)では、処理系が ISO IEC 60559(IEEE 754 と同一)に準拠している場合、以下のように規定されている。sqrt(conj(x)) = conj(sqrt(x))
。sqrt(complex(±0, +0))
はcomplex(+0, +0)
を返す。- (
NaN
も含む)あらゆるx
に対して、sqrt(complex(x, +∞))
はcomplex(+∞, +∞)
を返す。 - 有限の
x
に対して、sqrt(complex(x, NaN))
はcomplex(NaN, NaN)
を返し、無効演算の浮動小数点例外(FE_INVALID
)を引き起こす可能性がある。 - 有限で正の符号を持つ(
+0
を含む)y
に対して、sqrt(complex(-∞, y))
はcomplex(+0, +∞)
を返す。 - 有限で正の符号を持つ(
+0
を含む)y
に対して、sqrt(complex(+∞, y))
はcomplex(+∞, +0)
を返す。 sqrt(complex(-∞, NaN))
はcomplex(NaN, ±∞)
を返す(結果の虚部の符号は未規定)。sqrt(complex(+∞, NaN))
はcomplex(+∞, NaN)
を返す。- 有限の
y
に対して、sqrt(complex(NaN, y))
はcomplex(NaN, NaN)
を返し、無効演算の浮動小数点例外(FE_INVALID
)を引き起こす可能性がある。 sqrt(complex(NaN, NaN))
はcomplex(NaN, NaN)
を返す。
- 処理系が ISO IEC 60559 に準拠しているかどうかは、C99 の場合はマクロ
__STDC_IEC_559_COMPLEX__
が1
に定義されている事で判別可能であるが、C++ の規格書には該当する記載を見つける事ができなかった。 -
平方根の算出については、一部の算術型、および、
valarray
クラステンプレートに対しても、他のヘッダで定義されている。引数の型 関数 ヘッダ 備考 float
sqrt
cmath
double
sqrt
cmath
long double
sqrt
cmath
任意の整数型 sqrt
cmath
C++11 から valarray<T>
sqrt
valarray
例
#include <iostream>
#include <complex>
int main()
{
std::complex<double> c(1.0, 2.0);
std::complex<double> result = std::sqrt(c);
std::cout << "sqrt( " << c << " ) = " << result << std::endl;
std::cout << std::endl;
std::cout << "sqrt( 1.0 + 0.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{ 1.0, 0.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt(-1.0 + 0.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{-1.0, 0.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt( 0.0 + 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{ 0.0, 1.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt( 0.0 - 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{ 0.0, -1.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt( 1.0 + 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{ 1.0, 1.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt( 1.0 - 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{ 1.0, -1.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt(-1.0 + 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{-1.0, 1.0}) << std::endl;
std::cout << "sqrt(-1.0 - 1.0i) = " << std::sqrt(std::complex<double>{-1.0, -1.0}) << std::endl;
}
出力
sqrt( (1,2) ) = (1.27202,0.786151)
sqrt( 1.0 + 0.0i) = (1,0)
sqrt(-1.0 + 0.0i) = (0,1)
sqrt( 0.0 + 1.0i) = (0.707107,0.707107)
sqrt( 0.0 - 1.0i) = (0.707107,-0.707107)
sqrt( 1.0 + 1.0i) = (1.09868,0.45509)
sqrt( 1.0 - 1.0i) = (1.09868,-0.45509)
sqrt(-1.0 + 1.0i) = (0.45509,1.09868)
sqrt(-1.0 - 1.0i) = (0.45509,-1.09868)
バージョン
言語
- C++98
処理系
- Clang: 3.0 ✅, 3.1 ✅, 3.2 ✅, 3.3 ✅, 3.4 ✅
- GCC: 4.3.6 ✅, 4.4.7 ✅, 4.5.4 ✅, 4.6.4 ✅, 4.7.3 ✅, 4.8.1 ✅, 4.8.2 ✅, 4.9.0 ✅
- ICC: ??
- Visual C++: ??
備考
- libstdc++ では、通常 glibc の対応する関数を呼び出すため、上記の備考に記載した C99 の ISO IEC 60559 準拠要件を満たす。
しかし、glibc を使用していない libstdc++、および、libc++ は、当該要件を満たしていない(満たすつもりが無い?)ようである。
関連項目
名前 | 説明 |
---|---|
acos |
複素数の逆余弦を求める。 |
asin |
複素数の逆正弦を求める。 |
atan |
複素数の逆正接を求める。 |
acosh |
複素数の双曲線逆余弦を求める。 |
asinh |
複素数の双曲線逆正弦を求める。 |
atanh |
複素数の双曲線逆正接を求める。 |
cos |
複素数の余弦を求める。 |
cosh |
複素数の双曲線余弦を求める。 |
exp |
複素数の指数関数を求める。 |
log |
複素数の自然対数を求める。 |
log10 |
複素数の常用対数を求める。 |
pow |
複素数の累乗を求める。 |
sin |
複素数の正弦を求める。 |
sinh |
複素数の双曲線正弦を求める。 |
tan |
複素数の正接を求める。 |
tanh |
複素数の双曲線正接を求める。 |
sqrt |
実数の平方根を求める。 |
参照
- P1383R2 More constexpr for
<cmath>
and<complex>
- C++26で
constexpr
対応した
- C++26で