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    ラムダ式の初期化キャプチャでのパック展開を許可 [P0780R2]

    このページはC++20に採用された言語機能の変更を解説しています。

    のちのC++規格でさらに変更される場合があるため関連項目を参照してください。

    概要

    ラムダ式初期化キャプチャで、パック展開ができるようになった。

    例えば、関数パラメーターパックをムーブしてキャプチャしようとする際には、次のように書くことができる。

    template <class... Args>
    auto f(Args... args) {
      [...args=std::move(args)] { // 初期化キャプチャでのパック展開
    
        g(args...); // ラムダ式内で、パックを使う例
    
      };
    }
    

    仕様

    • 省略記号(...)が前に付いた初期化キャプチャは、宣言領域がラムダ式内である初期化キャプチャ(init-capture)パックを導入するパック展開である。
    • init-capture パックは、初期化子のパック展開の各要素に init-capture を導入する。

    例:

    template <typename... Args>
    void foo(Args... args) {
        [...xs=args]{
            bar(xs...); // xs は init-capture パック
        };
    }
    
    foo();  // OK: xs にはゼロ個の初期化キャプチャが含まれています
    foo(1); // OK: xs にはひとつの初期化キャプチャが含まれています
    

    • パックは、テンプレートパラメータパック、関数パラメータパック、または初期化キャプチャ(init-capture)パックである。 テンプレートパラメータパックまたは関数パラメータパックの要素の数は、パラメータパック識別子に指定された引数の数である。init-capture パックの要素の数は、その初期化子のパック展開の要素の数である。(「パック」の中に init-capture パックが追加された)
    • インスタンス化のコンテキストで、init-capture パックの要素は 初期化キャプチャ(init-capture) によって宣言された変数を指定する id-expression であり、パックが宣言されているパターンのインスタンス化の結果である。

    注:パターンとは、パック展開の省略記号ではないもので、例えば

    f(&rest ...);
    

    があるとき、&rest ... がパック展開で、&rest がパターンである。

    #include <utility>
    
    template <class... Args>
    auto g([[maybe_unused]] Args... args) {};
    
    template <class... Args>
    auto f(Args... args) {
      return [...args=std::move(args)] { // 初期化キャプチャでのパック展開
    
        g(args...); // ラムダ式内で、init-capture パック(args)を使う例
    
      };
    }
    
    template <class... Args>
    void h(Args... args) {
      auto lm = [&...refs=args] { // 参照キャプチャ形式へのパック展開
        // refsの各要素はargsの各要素への参照となる
      };
    
      lm();
    } // argsの各要素は関数h終了にともなって生存期間終了するため、
      // refsの各要素(参照型)へアクセスできるのはここまで。
    
    int main()
    {
      f(1, 3.14, "Hello, World!");
      h(1, 3.14, "Hello, World!");
    }
    

    出力

    この機能が必要になった背景・経緯

    パラメーターパックをラムダ式でキャプチャする際、コピーもしくは参照キャプチャ(あるいは std::tuple)を用いることでしかキャプチャをすることができず、初期化キャプチャにおいてパラメータパックの展開は禁止されていた。

    例えば、上記の例にある関数 f は、C++17 以前では次のように書く必要がある。

    template <class... Args>
    auto f(Args... args) {
      [tup=std::make_tuple(std::move(args)...)] {
        std::apply([](auto const&... args) -> decltype(auto) {
          return g(args...);
        }, tup);
      };
    }
    

    このようなコードは理解し難いため、この機能が提案された。

    また、C++17 までの初期化キャプチャにおけるパック展開の制限は、ラムダ式の初期化キャプチャがクロージャー型に「名前付き」メンバを導入することによるものだった。

    template <typename T> void call_f(T t) {
      f(t.x...);
    }
    

    C++17時点(そして現在でも)、パラメータパックは可変長テンプレートの文脈でしか現れないため、このようなコードは診断不要のエラーとなる。しかし、初期化キャプチャでのパック展開を許可してしまうとクラスメンバとしてパラメータパックが導入されるため、このコードが有効となる可能性がある。その結果、式に展開されていないパラメータパックが含まれているかどうかを構文によって(可変長テンプレートの文脈であるか否かによって)判断するメカニズムが失われてしまい、非テンプレートの文脈ですらパラメータパックが出現することを考慮しなければならなくなるなど、実装に多大な影響を与える。そしてそれは当時の実装では不可能であった。

    しかし、この問題はCWG 1760 の採用によって、初期化キャプチャはクロージャ型に名前付きメンバではなく無名メンバを導入するように文言が変更されたため、問題ではなくなっていた。

    検討されたほかの選択肢

    P0780R2 のひとつ前のリビジョンである P0780R1 では、 ... 記号の位置が、

    template <class... Args>
    auto f(Args... args) {
      [args=std::move(args)...] {
        g(args...);
      };
    }
    

    のような位置で提案されていた。これが現在のようになったのは、... の位置が導入する名前に先行する、既存の慣行と一致するようにするためである。

    関連項目

    参照