このページはC++17に採用された言語機能の変更を解説しています。
のちのC++規格でさらに変更される場合があるため関連項目を参照してください。
概要
C++17 から集成体初期化が拡張され、基底クラスを持つ型の初期化が簡潔に記述できるようになった。
仕様
集成体初期化において基底クラスの初期化についても集成体初期化 { parameter1, parameter2, ... }
の様式で同様に入れ子にして記述する。
例
#include <iostream>
#include <vector>
#include <string>
struct base_a { std::string s; };
struct base_b { double d; std::vector< int > vi; };
struct derived: base_a, base_b { char c; };
int main()
{
// このような初期化を C++17 以降は本機能により使用できるようになった
// この初期化は C++14 以前では基底クラスの初期化として扱えず翻訳に失敗してしまう
derived o
{ { // base_a; 本機能により基底クラスの初期化を { } で記述できる
"abc" // base_a::s
}
, { // base_b; 本機能により基底クラスの初期化を { } で記述できる
12.345 // base_b::d
, { 1, 2, 3} // base_b::v
}
, 'd' // derived::c
};
std::cout
<< "o.s = " << o.s << '\n'
<< "o.d = " << o.d << '\n'
<< "o.vi = "
;
{
using namespace std::literals::string_literals;
auto separator = ""s;
std:: cout << "[ ";
for ( const auto& i : o.vi )
{
std::cout << separator << i;
separator = ", "s;
}
std:: cout << " ]\n";
}
std::cout << "o.c = " << o.c << std::endl;
}
出力
o.s = abc
o.d = 12.345
o.vi = [ 1, 2, 3 ]
o.c = d
この機能が必要になった背景・経緯
この機能が無い C++14 までは、同様の事をしたい場合には基底クラスの初期化も含めたい派生型へ、基底クラスの初期化も行う構築子を記述する必要があった。
// C++14 までの旧い仕様で同様の事をできるようにするために必要だった記述
#include <iostream>
struct legacy_base
{
// いちいち書かなければならないのは面倒くさい
legacy_base( int a_ ): a( a_ ) { }
int a;
};
struct legacy_derived: legacy_base
{
// いちいち書かなければならないのは面倒くさい
legacy_derived( int a_, int b_ ): legacy_base( a_ ), b( b_ ) { }
int b;
};
int main()
{
// 初期化を簡潔に記述するためには legacy_derived, legacy_base の構築子に仕込みが必要だった
legacy_derived o{ 123, 456 };
std::cout
<< "o.a = " << o.a << '\n'
<< "o.b = " << o.b << '\n'
;
}
このような面倒を本機能により簡潔に記述できるようにしたかった。
// C++17 以降は本機能により C++14 までのように仕込みを行わずとも簡潔に基底クラスの初期化を記述できるようになった
#include <iostream>
struct legacy_base { int a; };
struct legacy_derived: legacy_base { int b; };
int main()
{
legacy_derived o{ { 123 }, 456 };
std::cout
<< "o.a = " << o.a << '\n'
<< "o.b = " << o.b << '\n'
;
}
この機能により C++17 以降では記述が簡潔になり、実装労力の低減、ソースコードの可読性の向上が図られた。